三人で結婚?
ケッコンとは、夫婦の契りを交わすことだという。動物で言うところの番いだ。
そう考えれば当たり前だが、一人の異性とだけ結ぶものであって、複数人と行うものではない。断じて違う。
「でも私、ランティスともイーグルともずっと一緒にいたいな」
無邪気な笑顔で光はそんなことを言う。嫌われていないだけマシなのか。いや、しかし……。
「そうですよ。何が問題なんですか?」
貴方こそ何可笑しなことを言うんですか、とでも言いたげな顔でイーグルは光に同意する。待て、オートザムの常識は放棄したのか、お前は。
この二人と話していても埒があかない。何しろ、意志の強さは折り紙つきだ。意志が強いというのは、言うなれば頑固だ。自分一人で無理ならば、他の者にも説得を頼めば良い。
「何を意地を張っているのだ。一人の伴侶を得られるだけでもめでたいというのに、二人ならさらにめでたいではないか」
この導師は何を言っているのだ。導師というのは人を導く立場の者ではないのか。
「大統領に報告しなくちゃな。お祝いのケーキは俺が焼いてやる」
「駄目よ。光のウェディングケーキは私が焼くんだから」
常ならば周りの非現実的な行動を止めようとするジェオと海までこの有様だ。
誰一人疑問を呈しないのはなぜなのか。やはり俺がおかしいのか?
「ランティスは、私とじゃ嫌なのか?」
悲しげな顔でそんなことを言われては、全力で否定するしかない。
ここまで自分が否定されるとは思ってもみなかった。やはり俺がおかしいのだ。三人共幸せになれるのだから、それでいいのだろう、きっと。
「髪の色はイーグルだね」
「瞳の色はランティスと同じですね」
「どっちの父様にも似てよかったねー」
待て。その赤ん坊は何だ。
「ヒカル……その子は?」
「私達の子がどうかしたのか?」
私達の子……その、俺とイーグルを足してニで割ったような赤ん坊が?
「……ヒカル、お前にあまり似ていないが……」
「父親にだけ似るなんて、よくあることですよ」
いや、それは分かる。だが俺とイーグルの両方に似ているなど、おかしすぎるだろう。
「どうしたんだ? ランティス」
「本当に、どうしてしまったんですか?」
なぜそんな心配そうにこちらを見る? また俺がおかしいのか? 俺がおかしくなってしまったというのか?
不思議そうに見下ろす二人の視線の先には、苦しそうなランティスの寝顔があった。
「あの、イーグル……起こしてあげた方がいいんじゃないかな?」
うなされてるよ、と心配する光に、イーグルは首を振った。
「いえ、これはとっても面白い夢を見てるに違いありません。僕には分かります」
「そ、そうなのか?」
親友であるイーグルがそう言うのなら、そうなんだろう。無理矢理納得してみせた光の視線の先には、まだ唸っているランティスの姿があった。
彼が安堵の息を吐けるのは、もう少し先になりそうだった。
2015年12月25日UP